本人に聞いた訳じゃない。
ただ漠然とそう感じただけ。
そう、これはただの勘。
けど…わかるんだ。
例え確かな根拠でなくても。
伊達にこの身体を共有してるわけじゃない。
一人で強がってんじゃねえよ、このバカ一護。
いつからか一護の身体に入るたびに妙に違和感を感じるようになった。
始めは気のせいだと思った。
けれど手が痙攣したように震え出した時、”コレ”がただ事ではないと嫌が負うにも悟った。
今まで一護の死神化にはルキア姐さんの助力が不可欠だった。
オレの出番はよほどの緊急時、長時間一護が身体を抜ける場合がほとんど。
虚退治も姐さんの伝令神機に指令が伝わって初めて行動に移せていたわけで…。
だから一護が常に死神化していることも、長時間身体が放置されることも滅多になかった。
「‥‥‥コン?」
「‥‥‥」
答えないオレに一層深まる眉間の皴。
「コ…」
「お前頑張りすぎ」
「は…?」
今度は惚けた顔。
こんな時はコイツも年相応らしく見える。
一護は姐さんが戸魂界に残った今も代行業を続けてる。
この空座町に現われる虚はほとんど一護が処理してると言っていい。
それこそ、本物の死神以上に。
けど‥‥一護は人間だ。
魂が死神化していても。
死神化した魂が持つ霊力が強大でも。
まだたった15年しか生きていない人間のガキなんだよ‥‥っ。
「訳わかんねぇ事言ってねぇで降りろ、コン!!つぅか、オレ身体に戻りてぇんだけど」
「駄目だ」
「はぁっ?!!」
「駄目だ…っ」
「コン…?…っ?!」
さっきよりずっと驚いた顔。
そりゃ自分の身体に馬乗りにされたうえに抱き締められたんだから驚くよな。
「後でちゃんと代わるから…しばらくこのままな」
言って返事を聞かずにさっきより強く、案外線の細い身体を抱き締めた。
何かを畏れているのを知っている。
悩んでいるのを知っている。
焦ったように我武者羅なのを知っている。
‥‥そのせいで魂魄が疲弊してるのも。
死神止めろなんて言わねぇよ。
お前の心に秘めた願いを知ってるし、何よりお前との出会いの切欠を否定する気はないから。
だから…せめて思うことは許してくれよな。
「頼むから‥‥黙って消えないでくれ…」