「ティナ、ジャムとホイップクリームのうち、どっちにする?」
「う〜ん…せっかくだから両方食べたいかな」
「了解っス。んじゃ、二つとも乗せとくな」
「うん!」



秩序の聖域から少し離れた場所に位置する洋館。
そこに設置された簡易デスクにて、ティーダはティナと一緒にお茶会の準備をしていた。
現在、他のメンバーは素材集めやイミテーションの討伐など諸々の事情で皆出払ってしまっている。




そしてこのお茶会の存在自体、当事者の二人以外は知らされていなかった。
正確に言えば、ティーダが菓子類に限らず一通り調理をこなせる腕の持ち主である事を、ティナ以外のメンバー達は知らなかった。



「このスコーンとっても美味しい!!ジャムにもクリームにもすごくあってるよ」
「ジャムは何種類か違う味を作っておいたから、飽きたら他のも試してみるといいっスよ」
「そうなの?やっぱりティーダはお料理上手ね」
「そうっスか?」
「そうだよ」



何故か嬉しそうに笑うティナにティーダは肩を竦めていた。



ティーダにとって「料理」とは“生きていくために必要であったこと”という感覚でいるため、褒められてもどう反応を返していいか分からないのだ。
ずっと一人で食事を取っていた環境だったせいもあってか、誰かに自分の作ったものを揮う行為にも正直慣れていない。



だから、ティナに「二人きりの時だけでいいから、ティーダの作ったものを食べさせてほしい」と頼まれた時は本当に驚いたものだ。
特に断る理由もなかったので、こうして引き受けたわけなのだが。




「…なぁ、ティナ」
「なぁに?」
「ティナがこうして何度も美味しいって言ってくれるのなら、オレもフリオ達と一緒に食事当番にまわった方が良くないっスか?」



現在、ティーダたちを含む秩序と混沌の神々の戦いに召還されたメンバーは10人いる。
そして戦いが終結するまで、メンバー全員での共同生活を送っているわけだが、そこで最も重要になってくるのが食事面での問題だ。
これについては得手不得手すっぱり割り切って役割分担が固定されていた。
特に調理面ではフリオニール、セシル、ティナの3人が常にローテーションしているのが現状だ。



ティーダ自身は特にこだわって調理している自覚はない(基本“食えればOK”精神のため)
だが、目の前の少女はそんな自分が作ったものに対して、いつも肯定的な評価をくれるのだ。
ならば、他のメンバーが口にしたとしてもそれほど悲惨なことにはなるまい、と。


ティーダとしては仲間の負担を少しでも減らそうか、というごく普通の配慮による提案だったのだが。


「それは駄目」
「へ?」




普段の控え目な様子をまったく感じさせない竹を割ったような即決回答に、ティーダは思わず目を見張った。
対するティナは一見するといつも通りの柔和な笑顔だ。
…あくまでティーダ視点からすれば、だが。



「ティーダの作る料理をいつでも食べられるのはとても魅力的だけれど…今はまだ、二人でお茶会を楽しみたいの」
「はぁ…」
「ね?お願い」
「ティナが良いならオレは構わないっスよ」


元々ティーダ自身に特別なこだわりは微塵も持ち合わせていない。
ゆえに、ティナの提案に否を言う気はなかった。



「あ、紅茶の御代わりはいるっスか?」
「うん。次はミルクティーが飲みたいかな」
「了解っス」





かくして、二人きりの秘密のお茶会はつつがなしく行われていくのだった。









6は確信犯です(爆)
どうせ他のメンバーにバレるのは目に見えてるので、少しで長く10の手料理を独り占めしたい心理が働きました。
拙宅の10は料理全般何でもござれです。