皮膚の裂ける音。 吹き飛ぶ身体。 ―――鮮やかな、紅 それが誰が流したものか、認識した瞬間。 何かが切れる音を、頭の片隅で聴いた。 しくじった……!! そう思った時には既に、自分の身体は吹っ飛んでいた。 一体だけなら踏ん張れた、しかし予想外の連撃。
札配置で引き寄せていたのが仇となったのかもしれない。
二対の隠人の攻撃。 札強化した銃がまさかの弾詰まりを起こし、結果的に中途半端に攻撃が途切れた事がそもそもの失敗。 どうにか受身を取ったものの、叩きつけられた衝撃に一瞬息が詰まる。
オマケに、 ドロリ、 目に掛かる紅い液体に、舌打ちする。 …まずい、額を切った。 頭部の怪我は、例え軽度であっても出血が派手になってしまう。
これでは、半端に目潰しされたようなものだ。 とにかく、一緒に来て貰っていた親友二人に気をつけるよう声を上げかけた、 瞬間。 ゴキィッ!!!!
ゴドンッ!!!! 「………え」 千馗は思わず気の抜けた声を上げた。 左手には、自他共に認める親友の壇燈治。
何故か拳を振り上げた姿勢。 右手には同じく少々特殊な事情を持つものの、同僚であり親友でもある雉明零。
こちらは回し蹴りを決めた直後らしき姿勢。 更にその向こう。
先ほど千馗を吹っ飛ばした隠人、一体ずつ。 「…はっ、なんだよ。でかい図体のわりには大したことねぇな」 ……壇、まさかお前は拳一発で土の塊ともいえる隠人をぶっ飛ばしたのか。
そして嗤っているが、どんな不良も裸足で逃走かましそうな、素敵な凶悪顔だ。 「…………」 ……そういえば、樹海で一緒に試験を受けた時、雉明は蹴り技を主体にしていた。
一緒に洞に潜ってもらうようになってからは、もっぱら鬼札の力を使っていたから、すっかり忘れていたけれど。
…獣に似た隠人の顔面が、見事にへこんでいる。
そしてここまでの雉明の無表情は初めて見た。
樹海で会ったばかりの頃でさえ、もう少し表情筋が動いていたろうに。 「……あー…雉明?壇?」 何となく負のオーラを纏っているような気がする二人に声をかける。
こんなナリだが、自分は無事だという意味も込めて。 すると、弾かれたように同時に振り返るもんだから、ちょっと驚いた。 「っ千馗!!」
「馬鹿ッ!!お前その怪我で動こうとすんな!!」 ああ、良かった。
いつもの二人だ。
さすがにあの異様な空気はオレでも腰が引けそうだったので。 「いや、大丈夫だ。ちょっと出血派手だけど」
「だったら大人しくしとけ!!顔色が貧血だって言ってるじゃねぇか」
「壇の言う通りだ、千馗。今、治療道具を出すから…」 本当に、大した事はないのだけど。
二人の真剣すぎる表情が有無を言わせてくれなそうだったので、オレは大人しくする事にした。 ……今度から、弾詰まりには注意しよう。 最初、W相棒で三つ巴っぽく書こうと思ったら、単に過保護なW相棒→千馗になった件(爆)
燈治が拳なら零は蹴りだと思うんだ。