「―――覚えときな。やり合う道理が見つかった時にゃ、俺は躊躇しないぜ」 挑発、威嚇―――牽制。
確かな敵意にも似た感情を向けられた、その人は。 「―――気が合うな。オレも、同じ意見だよ」 目を逸らす事なく、笑ってみせた。 「さっきのメール、ひょっとして前の学校のお友達?」 昼休み、今日初めて顔を合わせたその人に、私は思い切って話しかけていた。 転校生―――七代千馗くん。 内心ドキドキしながら校内案内を申し出た私に、少しの瞬きの後、微かに笑って了承してくれた。
自分に説明出来得る限りを話しながら校内を周って、その後一緒に昼食も食べて。
不意に七代くんの携帯に着信が入って、それに目を通していた時の彼の表情が、とても柔らかかったような気がして。 「ああ……ここに来る直前に知り合った人なんだけど……出来たら、これからも仲良くしたいなって思ってる」 まだ、少ししか話していないけれど、気づいた事がある。 彼は、とても優しい笑みを浮かべる。 一見すると表情の動きが少ないのだけど、こちらが話せばきちんと反応を返してくれるのだ。 「そういえば、七代くんて本が好きなんだね。牧村先生とも楽しそうに話してたし」
「うん。よく国立図書館にも行くよ」
「そうなの?じゃあ、ウチの学校の図書室も、気に入ってもらえるかな」
「ああ。読み応えのありそうなのが、たくさん有りそうだ」
「ふふっ」 彼の柔らかい表情を見ていると、何だかこっちまで嬉しくなってくるようだから不思議だ。 彼と、もっと仲良くなりたい。
自然と、そんな想いが心に浮かび始めていた。 放課後、今日は休みなのかと案じていたクラスメートが教室に顔を出した(窓からの登場にとても驚いたけれど)
クラスメート―――壇くんは、七代くんを見るなり不躾とも言える疑問を浴びせてきた。
二人の間のやり取りは数瞬。
一見すると、一触即発な雰囲気。
けれど、何故か私は確信していた。 きっと、壇くんも七代くんに感じる”何か”があったんだ。 クラスでは浮いてるような扱いだけれど、彼は、自分から意味もなく喧嘩を吹っ掛けるような人ではない。
それを証明するように、七代くんを見る壇くんの瞳の奥は、笑っている。 結局、そこに割って入った親友の声のおかげで、その場はうやむやになってしまったのだけれど。 「問答無用よ。二人とも、さっさとしなさい!!」 この學園の生徒会長を務める親友の呼び掛けに、壇くんと七代くんは顔を見合わせている。 「……だとよ。ま、コレがこの學園の掟だ。これ以上面倒起こしたくなかったら、諦めな」
「まあ、何となくこうなるような気はしてたかな」 肩を竦める壇くんと、苦笑を溢している七代くん。
今日、初めて顔を合わせたはずなのに、二人が並んでいる姿はとても自然なように見えて。 「じゃあ、みんなで行こっ」 小さな、けれど確かな変化の訪れに、私は笑って二人を促した。