青木ヶ原樹海―――別名、富士の樹海。
国の天然記念物に指定されている、1200年の歴史を持つ原野を、千馗は先導れるまま歩いていた。
前には三人分の背中。
自分と同年代だと思われる制服を着た男女と、この場における責任者である男性。



武藤いちると雉明零。
二人は自分と同じく、封札師認定試験のために呼ばれたのだという。



常人には視る事の出来ないモノを視る眼―――”秘法眼”を持つ者として。



歩きがてら、大方の説明は受けた。



Out of place caRDS―――「場違いな四辺形」とも言われるオーパーツの一種。
通称「カミフダ」と呼ばれる、徒人には決して扱う事の叶わない力と叡智の結晶。
封札師とは、その「カミフダ」を回収し、保護・保管を目的としたカードアーカイバーとも呼ばれるエージェントなのだと。
そして、その封札師となるには”秘法眼”の所有が不可欠らしい。



Oopards exploration and Archives Squad―――通称OXASから派遣されたという封札師―――伊佐地大督はそう説明した。
彼はOXASの日本支部、国立国会図書館 収集部 特務課の主任であり、自分たちの上司に当たるのだという。




……随分と壮大な話だ。




よもや、何気なく答えた図書館でのアンケートが、自分の人生を左右する転機となるとは。



今まで視るだけで深く関わる事はしてこなかった。
封札師になったとしたら、そうも言ってられなくなるのだろう。




貴方の言った通り、オレは色んなモノたちを視る事になりそうだ。




そう一人ごち、浅く目を閉じた。



その時、

「――――七代」




静かな声が鼓膜を揺さぶった。
ふと目を開けると、何時の間にかこちらを向いていた雉明が静かな視線を向けている。



「雉明?どうしたんだ」
「―――どこか、悪いのか」
「―――え?」



問い掛けの不明瞭さに、思わず目を瞬かせる。



「胸に手を置いていた。―――少し俯いてもいたから、気分でも悪くなったのか、と」
「ああ……」




どうやら、知らずいつもの癖が出ていたらしい。



「心配かけてすまない。ただの癖みたいなものなんだ。どこか悪いというわけではないから、安心してくれ」
「……そう、なのか?」
「ああ。……ありがとう、気にかけてくれて」



出来るだけ意識して口元を緩めた。
あまり表情が動かないらしいオレだから、少しでも感謝の気持ちが伝わればいいと思いながら。



雉明はひとつ瞬くと、目元を緩ませたように見えた。



「いや……こっちこそ、すまない」
「別に雉明が謝る事ないのに」
「…そうか、すまない」

そのやり取りが面白くて、オレは思わずクスクスと笑ってしまった。
雉明もそんなオレを見て、軽く瞬いた後、微かに笑った。