「スワガト・ヘー!!魅惑のカレー桃源郷にようこそゥー!!おや、千馗ドノ。今日はお一人でゴザルか?」
「こんにちは、カルさん。今日は皆、用事があったんでオレ一人です」



そう、いつもなら学校内で摂る昼食を千馗は一人、カルパタルの経営するカレー屋で済まそうと訪問していた。
某生徒会長さまには後で確実に説教を食らうとは思うものの、気分的に外で食べたい気持ちが勝ったのだ。
……甘んじて怒られる覚悟は出来ている。
カルパタルと挨拶を交わし、一先ずカウンター席に着こうとした時。



「千馗!コッチコッチ!!」



殊更明るく店内に響く声に振り返った千馗は、見とめた人物に目を瞬かせた。






「Hola、千馗!一人でお昼なんテ、めずらしいネ?」
「たまにはいいかと思って。二人もここで?」
「Si!!カルのカレーは今日も情熱的!!」
「……メシに情熱はいらんだろう」
「ミギーったら分かってナイネ。そんなんジャ、カルの必殺ロシアンカリーの当たりを見抜くコトは出来ないヨ?」
「何でカレーにロシアンルーレット要素が必要になる!!」


どこかズレたアンジーの回答に怒鳴り返した後、御霧は眼鏡を押し上げつつ溜息は吐き出した。
……今日も鬼印盗賊団の参謀は苦労が絶えないらしい。
アンジーの勧めにより同じテーブル席に同伴させて貰った千馗は、そんな二人の様子にこっそり苦笑を漏らした。
そして、ふと面子が一人足りない事に気付く。



「……そういえば、鬼丸は一緒じゃ―――」

―――♪〜〜〜♪〜―――



ないのか、と続けられるはずだった言葉は、タイミングよく鳴ったメロディに遮られてしまった。
一言詫びてから千馗は自身の携帯を開く。
どうやらメールが届いたらしい……が、問題は送った人物とその内容だった。




『牛丼大盛り。忘れたら御霧の眼鏡ブチ折る』




「………」
「……待て。なぜお前宛てに、この内容のメールが届く」



まさに話題に上がりかけていた人物からのぶっ飛んだメール内容に千馗は目を丸くし、千馗の驚いている様子に思わず手元を覗いた御霧の眉間に盛大に皺が寄った。
一緒になって覗き込んでいたアンジーはしばし思考し、「あ」と声を上げる。



「もしかして、千馗がこのあいだオカシラに牛丼届けてあげたノ、味シメちゃったカナ?」
「何ッ?!!」



目を剥いた御霧を余所に、千馗は納得顔を示した。
そういえば以前も似たような内容の誤送信メールを受け取り、後でとばっちりを受けるであろう参謀殿の心労を案じたことから、放課後になって牛丼片手に寇聖高校を訪問した事があった。
あの時の鬼丸はやけに機嫌が良かったと感じていたが。


「馬鹿かお前は!!そんな事をしたら、奴を余計につけ上がらせるだけだろう!!」
「う〜ん……でも間違えたって分かった後も、オレでも構わないってメールが来たし……」
「アハハッ!オカシラ、千馗が届けてくれテ嬉しそうダッタもんネ!!」



経緯を知って唸る御霧に、心底楽しそうに笑うアンジー。
対照的な反応の盗賊団幹部二人に瞬きつつ、一先ず千馗は鬼丸宛てに返信メールを送った。



『放課後そっちに行くから、少し待っててくれ』




そして案の定、待つのに焦れた義王が鴉乃杜に突撃し、一悶着あったのは言うまでもない。