文明が進化する際、何かしら歪みが生じる。
今回の任務内容は正にその典型とも言えよう。 レプリロイド工学に一つの革新を齎したフォースメタルの出現とそれに付随するかの如く発生したイレギュラーの発生に、ゼロは内心嘆息する。
与えられた任務の内容はフォースメタル発掘のために建造された人工島「ギガンティス」への潜入と調査。
既に入島した先遣の部隊は全滅したという。
まず間違いなくイレギュラーとの戦闘は避けられないであろう―――長年続くハンターとしての勘か、そんな確信めいた予感すらある。
はたして機械であるレプリロイドに”勘”なんてものが存在するのか、甚だ不明であるが。 とは言え、今更臆するはずもない。
危険は承知だが、イレギュラーハンターとして否が応でも修羅場を潜り抜けて来た身だ。
何処か凪いだ心地でいたゼロの聴覚センサーに、ある音をキャッチする。
身体を預けていた壁から身を離して前方を見ると、ゼロのカメラアイはある一つの色彩を認識した。 それは、鮮やかな青。 「……ゼロ?どうしたんだ、こんな所で」
「いや……見違えたな、エックス」 青の正体―――それはチェーンアップされた新型アーマーに身を包んだゼロの親友であった。
エックスはゼロの言葉に些か苦笑気味に相好を崩す。 「やっぱり物々し過ぎるかな?」
「そうは言ってないさ。珍しいとは思ったが」
「何となく落ち着かないんだ。性能面では大いに強化されてるらしいけど……」 今回の任務におき、エックスは機体のアーマーの新調が必須となった。
任務の危険度と、今回最も注目されているフォースメタルの装着を考慮しての事だ。
イレギュラー化の要因の一つとも言える物質だが、レプリロイドの性能を格段に引き上げる要素を捨て置くには惜しいという事らしい。
ゼロもアーマーの新調こそしていないものの、フォースメタル装着のための機体のチェーンアップは受けている。 「機体の調整は」
「換装と同時に済ませている。リディプス大佐との最終確認を終えたら、すぐにでも出るつもりだ」
「了解した」 連れ立って歩行しながら、ゼロは己より小柄な機体を改めて見やった。 普段エックスが身に着けているアーマーは、凡そ装飾類などない至って簡素な外観をしている。
それは彼が純粋な戦闘型であると同時に、能力向上のための強化パーツを換装しやすくするためなのだろう。
ゆえに、平常時に装飾の目立つアーマーを着用しているエックスの姿はゼロの記憶回路に強く印象付けられた。 そして、彼の背後にあるモノに唐突に気付く。 「……これは、」 青い機体の背に、真紅の帯が翻っていた。 ゼロの視線に気付いたのであろう、己の背後を顧みたエックスがそっと嘆息する。 「ビームマフラーって言うらしい。正直、何のために着けられたのか皆目検討が付かない」
「……少なくとも戦闘時に使うもんではないな」
「まったく……俺の機体にこんな機能付けてどうするんだか……」 普段の装いがいっそ質素とも言えるだけに、エックス自身は何の感慨も抱いていないらしい。
己も大概だが、この親友も自身の事に対しては様々な意味においてまるで無頓着だ。 だが――― 「……いいんじゃないか?」 首筋の下、青を基調としたアーマーに添えられた色彩。
訝しむエックスを余所に、ゼロは何処か満足げに口角を上げていた。
普段滅多に見れない後輩兼親友の装いに満足げな先輩(爆) ビームマフラー大好きです。