「疲れているのではないか」と聞いた。
返ってきたのは「大丈夫です」の一点張り。
深く考えるまでもなく、嘘だと気づいてはいたけれど。
最近、沢田の笑った顔を見ていない。
否、本人からすれば、十分微笑んでいるつもりなのだろう。
けれどそれは観ているこちらとしてはまるで胸を締め付けられるような類のもので。
…笑っていて欲しいと思うのはいけない事なのだろうか。
今の自分たちが身を置いている場所が決して綺麗な世界でない事は重々承知している。
まるで腹の中を探り回るかのような他ファミリーとの会合をこなすこともあれば、紅と硝煙と断末魔の叫びが途絶えぬ抗争に身体を張らねばならぬこともある。
この自分の手が薄汚れてしまったことも自覚している。
ましてや彼は格式と伝統を重んじるファミリーの正統なる血族であり、それを取り纏めるボス。
己はそんなボスのために在ることを選ばれた守護者。
その立場も責務も…それに伴う彼自身の覚悟もこの目でしかと見てきた。
分かっているのだ。
これは単なる我がままだと。
他でもない、この俺自身だけが望む渇望じみた願い。
けれど―――――。
ファミリーの伝統や面子、その身に流れる血筋など一切関係なく。
ただ心から「沢田綱吉」が笑っていることを。
昔のように無邪気なだけでは前に進めないのだと分かってはいても。
せめてなんのしこりも重みもなくただ穏やかなる微笑を浮かべていて欲しいと。
「晴れの守護者」ではなく「笹川了平」が望むことは、
許されざる罪になってしまうのだろうか――――?